雑記帳

電子計算機の"明後日"から、他愛もない話まで。

3モードCRTディスプレイでD3映像を!

また暫く間が空いてしまいました。

 

この間、職場が変わったり「電脳文庫プロジェクト」の開発を進めたり色々あった訳ですが、後者については初回リリースまでもう少々お待ち頂ければと思います(カーネル自体の方も結構直してましたので…)。あと、親指の友 Mk-2ドライバですけど、手持ちのサブ機をWindows 10に移行してみようと考えていますので、動作の可否も来月中にはご案内できるのではないかと思います。

 

ちょっと長いので、今回は章立て風味に書いてみたいと思います。

 

はじめに

いつのまにか、ケーブルテレビによる地デジのアナログ変換サービスが終了したようです。

地デジ移行を機にかつてのCRTテレビから液晶テレビ等に移行した方も多いとは思いますが、私はカラー液晶画面が大変苦手なので、手持ちのCRTモニタと地デジチューナを使ってテレビを見るようにしました*1

ちょっと高機能なチューナだと、一般的なPC用モニタに直接出力できるようなコンバート機能(RGB出力の際、解像度と同期信号が一般のPC画面と同じになるように変換する機能)が入っていたりしますが、今回は折角取り扱える映像信号の自由度が大きい(特に、インタレースをそのまま扱える)CRTモニタを使う訳ですから、できれば映像の加工を最小限にして映してみたいところです。

ということで、チューナのD端子出力(1080i == D3出力)を、Y-Pb-Pr→RGB変換回路(トランスコーダ)経由で表示するようにしてみたいと思います。
この場合、各ピクセルの色信号は適切な変換がかかりますが、同期タイミングや解像度はオリジナルのままなので、信号上は最小限の変換になるかと思います。

 

3モードCRT

ここで言う"3モード"とは、水平同期信号の入力周波数が連続対応(マルチスキャン)ではなく、3つの周波数帯(15k/24k/31k)にしか対応しない古いタイプのものを指します。代表的なものは、富士通FM-TOWNSやシャープX68000の専用ディスプレイ、日本電気のPC-TV~型番のCRT(PC-TV454等)、アーケードゲームに使われる業務用CRTモニタ等が該当します。

D3フォーマットの水平同期周波数は33.75kHzなので、一見すると3モードモニタではダメなような気がしますが、通常、こういったモニタでは対応水平同期周波数にマージンを設けてある場合が多く、例えばPC-TV454の製品仕様(http://121ware.com/support/product/data/spec/dsp/d117-1.html)を見ますと、

水平解像度(周波数)(KHz) :水平640(15~17/22~26/29~34)

なんて書いてあります。つまり周波数上はギリギリ入力可能です(ピクセル解像度はアウトですが、信号処理上問題がある訳ではないので無視します)。インターレース映像の場合、信号上は縦解像度半分・垂直同期2倍で出力されていますので、垂直同期周波数も59.94Hzとなり、

垂直解像度(周波数)(Hz) :垂直200/400(自動)(55~100)

 の仕様を満たしていますので、やはり同期信号周波数としてはOKです(ライン数の仕様は無視)*2

ところで、一般的なマルチスキャンモニタだと"水平同期周波数31kHz以上対応"となっているものが多いので、一見使えそうに見えます。

しかし、自分が使ったトランスコーダが怪しい代物(後述)のせいか、手元のマルチスキャンモニタ(SONY PCVD-A201)では映像を受け付けてもらえず、まともに表示できませんでした(Out of rangeとなり、表示される水平同期周波数が100kHz超の高周波になる)。

3モードCRTであれば、そういった高周波の成分には物理的に追随できないので再現率が高いだろうということで(大汗)、今回は3モードCRTに限って話を進めます。恐らく、適切な同期分離回路(特に、同期信号出力中の映像出力マスク)を持ち、まともなV-SYNC/H-SYNC信号が出力できるようなトランスコーダであれば、マルチスキャンCRTディスプレイでも正しく表示できる可能性が高いと思われます。

 

使用機器

  • 地デジチューナ IOデータ HVT-T100
  • トランスコーダ aitendoで昔売られてたもの(某所で地雷扱いされていた旧版の方)
    • 基板形状はほぼ正方形で、同期分離回路にLM1881M(マーキングを消して書き直した形跡がある。パチモノ?)が使われている
    • よって、同期出力はV-SYNC + C-SYNCとなっている(H-SYNCのラインにC-SYNCが出ている)。*3
    • 但し、Y信号から同期分離ICに至る経路がデータシートの要件を満たすように、一部改造済。
      • 具体的には、R31と並列に10Ωを追加(本来の意図はジャンパ)、C4削除。
      • どなたかの改造例を参考にしたものだったのだが、ソース不明。

 

試したCRTモニタ

 

実験結果

PC-TV454 on 21ピンRGB

△です。

RGB 21ピンは同期信号としてC-SYNCしか持っていません。通常はここが一番厄介なところ(同期信号を合成したりする)なのですが、今回のトランスコーダはC-SYNC出力があるので、これをそのまま9ピン(コンポジット IN)に突っ込んでしまえば問題ありません。また、21ピンRGB入力へ切り替えさせる為に、TTLでHレベルを11ピン(AV)に、1~3VDC・75Ωマッチングの信号を16ピン(Ys)に入れる必要があります。

結果、D1/D2信号では全く問題無く映すことが出来たのですが、D3信号はなぜか垂直同期が流れてしまい、使い物になりませんでした。

 

PC-TV454 on アナログRGB(D-SUB 2列15ピン)

○です。

9ピンにC-SYNC入力があるらしいので、そちらにC-SYNCを突っ込んでみましたが、なぜかまるで認識しません。

一方、H-SYNC入力(14ピン)にC-SYNCを突っ込み、V-SYNCを未接続にしてみたところ、なぜか表示に成功しました(D1~D3)。
どうやらH-SYNC端子がC-SYNC入力も兼ねているようです。
21ピンRGBの場合と異なり、こちらではD3の表示もバッチリでした。

 

FMT-DP5361W

○です。

FM-TOWNS用のトリニトロンディスプレイで、こちらも3モードスキャンの代物になります。

TOWNS用モニタにもC-SYNC入力(7ピン)があるので、こちらにC-SYNCを突っ込んだところ、D1~D3まで正しく表示することができました。

ちなみに、V-SYNC/H-SYNCのラインもあるので(15ピン/14ピン)、こちらにV-SYNC/C-SYNCを突っ込んでみましたが、正しく表示することはできませんでした(15kHzモードになった後、走査が止まってしまう)。

 

仕舞いに

ひとまず我が家では、持てる機材を駆使して、(個人的に色味が苦手な)小型液晶を買わずに済みました。

もし同じようにお困りの方で、手元に運良く3モードCRTが転がっている…という方がいらっしゃったら、試してみるのも良いかもしれません(同じように上手くいく保証はできませんが…自己責任でお願いします)。

欲を言えば、もっと見やすい次世代のディスプレイが登場することを願ってやまない訳ですが…。独立素子の自発光デバイスは光源の劣化差(所謂画面焼け)が問題になるだろうから…MEMSシャッターとかの方が有利なんかな?

*1:

どうでも良い話ですけど、皆様、家電量販店に入って小型液晶テレビコーナーを見て、見やすい画面とかを目撃したことってありますか?

中型サイズ位(40型付近)だと、稀に見るに堪える画面のものがありますけど、大型と小型は個人的にダメなものばっかりです…。

多分、真ん中近くだけ妙に明るく見えるのとか、四隅が見にくいのとか、不自然にコントラストが大きい画面とかが私的にダメなんだと思います。あとやたらと青白い画面も…。

*2:映せるといっても、勿論、そのままでは投影面と映像のアスペクト比が異なるので、V振幅調整等をする必要がありますし、H振幅調整できない機体では横表示がはみ出してしまいますが…。また、D3表示では他のモードに比べて色が暗くなります。

*3:同期期間中にRGB信号が出ているせいか、出力される映像は白っぽい画面で黄色寄りになったりします…。

それでも、黄ばまない範囲では液晶に比べると自然に見えるので、個人的には遥かにマシと考えています。
そのうち自作し直そうかなぁ…LMH1251使うと抵抗の選別とかしなくて済みそうだし。